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音楽利用トラブル回避ガイド

2017年01月19日 (木) 音楽利用トラブル回避ガイド

「CM音楽制作の注意点」の巻

CM音楽については少し特殊な部分があるので、マネージャーのみなさんは、音楽制作会社(音プロ)や広告代理店から楽曲制作等の依頼を受けた際にはご注意を。ヘタするとアーティストのことをないがしろにしてしまう危険性も!

解説

 CM音楽は、広告代理店からCM音楽制作会社(音プロ)に、楽曲制作や選曲が依頼されるケースが多くあります。音プロからアーティストにCMオリジナル楽曲の書き下ろしの依頼があった場合、どのようなことに注意すべきでしょうか。
 CM音楽制作の仕事が発注される際には、通常、音プロより企画書が届きますが、その内容は、CMのクライアント(広告主)・出演者・絵コンテ・放送期間や量、制作を依頼する楽曲のイメージといったものが中心となります。
 音プロが社員として雇用している作家や業務提携している作家のみで楽曲を作り、買い切りのような形で楽曲を納品する場合は、このままでも問題ないかもしれません。というのも、社員である作家が業務の一環として制作した楽曲の著作権は音プロが保有することになりますし(著作権法第15条)、業務提携作家に対しては、楽曲制作の対価を支払うことによって、音プロがその著作権を買い切る契約内容となっていることが多いからです。
 ただし、外部のアーティストを起用してCM音源を制作する場合はこの内容では不十分で、最低限、次の内容について事前に取り決めをしたうえで進めなければなりません。
 まず、著作権に関して、書き下ろしの楽曲であっても契約等で取り決めのないかぎり著作権は作家に帰属します。ですので、あとになって、著作権の帰属でトラブルになることのないよう、事前に著作権者が誰になるのかを確認しておくことが必要です。
 音源制作に携わるアーティストに関係することでは、制作スケジュールや納期はもちろん、スタジオでの拘束時間などの実稼働時間等を確認し、スケジュールに無理のないように調整を行います。
 また、楽曲のプロモーションに関しては、CMオリジナル楽曲を作った(歌った)ことをアーティスト側から告知することは可能か(可能ならその時期)、テレビCMほか各媒体でアーティスト名が表示されるのか、クライアントのHPで紹介してもらえるのか、楽曲のフル尺を再録音してレコードとして発表(収録)できるのか(可能ならその時期)等を確認します。
 これらの内容を確認したうえで、この仕事に対する報酬の話に入っていきます。内容が決まらないうちに先に報酬を決めてしまうと、あとでトラブルの種になりかねませんので、くれぐれも注意しましょう。
 以上のことをふまえて、マネージャーとしては、報酬と、楽曲・アーティストのプロモーション効果、仕事量、アーティストの立場、その他付帯する条件を総合的に勘案したうえで仕事を受けるかどうかを決定していく必要があります。
 そして、上記の決定条件を、クライアント、広告代理店、音プロ、マネージャー、作家、アーティストの関係者すべてが共有していることが大切で、とりわけ、マネージャーとしては事前に発注者との確認作業を十分に行い、作家・アーティストの理解・納得を得たうえで円滑に仕事を進めていくことが重要なポイントになります。

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