解説
音楽の著作物には、著作物を創作した作詞者・作曲者などが持つ著作権が存在します。
この著作権は、複製権、上演権・演奏権、公衆送信権など複数の権利(支分権)を含んでおり、第三者が著作物を利用するときには、著作権者の許諾が必要となる(著作権者の許可なく無断で利用してはならない)ことが著作権法によって定められています。
Aくんは、アーティストのライブ映像を無断で撮影し、インターネット上のファイル投稿共有サービスにアップロードしてストリーミング配信ができる状態にし、第三者がダウンロードできるようにしていました。
Aくんがとった行為に対して、アーティストや著作者のどのような権利が働くのでしょうか?
Aくんが撮影した映像には、アーティストが歌っている様子が収録されており、この映像をインターネットに公開しようとする場合には、楽曲の著作者が持つ著作権と、アーティスト(実演家)が持つ著作隣接権が働きますので、事前に両者の許諾を得る必要があります。
著作権法において、「サーバーへのアップロード」には、著作者の複製権(第21条)と実演家の送信可能化権(第92条の2)が、「サーバーにアクセスした人のリクエストに応じて送信する」行為には、著作者の送信可能化権を含む公衆送信権(第23条)が働くと規定されています。
これらの権利者に無断で著作物を利用し、権利を侵害した場合には、損害賠償や不当利益の返還、名誉回復措置等の民事上の請求をされることや、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方を科せられることもあります。さらに、法人による侵害の場合には、罰金額の上限が3億円に引き上げられます。なお、権利者に無断でアップロードされた音楽や映像という事実を知りながら、それをダウンロードすることも違法です。
また、アーティストにまつわる大事な権利のひとつに「パブリシティ権」があります。
アーティストやタレントのような有名人の氏名や肖像は、DVDや写真集に利用される等、それ自体に商品価値があるだけでなく、企業の商品販売促進のための宣伝等に利用されることによって、顧客を吸引し経済的利益を生み出す力を持っています。この氏名や肖像が生み出す経済的な利益を保護する権利がパブリシティ権です。
アーティストやタレントは、コンサートや放送番組への出演をはじめとする様々な活動によって、氏名や肖像の価値を高めていますので、アーティストの肖像が利用されているライブ映像や写真を無断でインターネットに公開することや、それを販売したりする行為は、アーティストのパブリシティ権を侵害することになるので十分に注意してください。