解説
CMに市販CDの音源を利用する場合、音楽にまつわるどのような権利が働いているのでしょうか。テレビCMの例を見ていきましょう。
テレビCMでは、映像に音を固定する録音行為と、それを放送する行為に権利者の許諾が必要となります。
著作者の保有する(1)(4)の権利については、権利者からの委託を受けて、日本音楽著作権協会(JASRAC)や株式会社NexTone(ネクストーン)等の著作権等管理事業者が管理を行っているケースが多く、使用料は各管理事業者の使用料規程により定められています。
いっぽうで、レコード製作者と実演家が保有する(2)(3)の権利は、権利者自らが管理を行っていることが多いので、使用料は権利者が定める額となるのが一般的です。
このように、CMで音楽を利用する場合には、原則として使用料が発生しますが、この使用料を権利者が意図的に免除することによって楽曲のCM起用を促進し、CMの露出効果により、CDや音楽配信等のセールスアップを狙っていくことが、重要な楽曲プロモーションのひとつとなっています。
著作権管理事業者が管理を行っているケースが多い(4)の権利に関するCM放送使用料は、権利者の事前届け出によって、その使用料を免除することが可能ですが、管理事業者により対応が異なっています。
JASRACの場合には、CMのために書き下ろされたCM委嘱作品の使用料免除期間は原則1年、新曲プロモーションのために広告主等から協力を得られたCMタイアップ作品の使用料免除期間は、楽曲の販売開始から3ヶ月(最長1年)となります。JASRACでは、CMタイアップが可能な商品数は3つまでとなっており、また、旧譜のタイアップでは使用料は免除されませんので注意が必要です。
NexToneの場合には、CM放送使用料の免除期間やタイアップ商品数の制限はなく、旧譜の場合でも新譜と同様にタイアップによる使用料免除対応が可能です。使用料の免除だけではなく減額対応も可能なので、権利者と利用者のメリットを見ながら使用料の調整を行うことができます。また、広告主のホームページでCMをストリーム配信する場合にも、権利者の事前届け出によって、使用料を免除・減額することが可能です。
なお、外国作品をCMに起用する場合には、国内の音楽出版社がCMへの録音行為に関するライセンスを受けていないことが多いため、海外の音楽出版社の確認が必要となります。
CMで音楽を利用する場合には、多くの確認事項が存在しますので、各権利者・利用者間の連携を密にして、適切な手続きを行いましょう。