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特集

2019年10月04日 (金) 特集

interview 3

ミュージシャンにとっての音楽映画

小出祐介さん

Base Ball Bear

高校時代に映画監督を目指したこともあり、ミュージシャン仲間と組んだ「映画部」の部長を務め、WEB連載『みんなの映画部』を持つ小出祐介。邦画を題材に、ミュージシャンとしての見地から音楽映画を語っていただいた。

音楽が生まれる過程に気づいていくことにも
感動があるんだなと。

YUIとかを見つけた人もきっとこうだったんじゃないかな(笑)

小出さんは音楽映画をどういうふうに見ているのでしょうか。

正直、ミュージシャンも夢見れるような映画っていうのはそんなに多くないですけど、そんななかでも『ボヘミアン・ラプソディ』は夢見れる映画だった。音楽を取り扱う映画は海外のほうが圧倒的に多いですよね。

日本は学生の青春映画が多い印象があります。

キッズたちがバンドを始めて青春する系の。日本だと上り詰めた先にあるのが邦楽ロックシーンとか日本のロックフェスだから、海外とはスケールの大きさが違ってくる。それを逆算して考えてみると、日本には『ボヘミアン・ラプソディ』みたいな映画を作る土壌が意外とないんだって気づかされるんですよ。『リンダ リンダ リンダ』が文化祭で体育館のライブで終わったように、身近なものとして描いているんですよね。『ボヘミアン・ラプソディ』や『ロケットマン』はスターを描いているのに対して。日本のそういう伝記映画も観てみたいです。今度、浜崎あゆみさんの『M』がドラマ化されるじゃないですか。そういうのが増えるといいなと思う。

伝記映画以外だと小出さんも大好きな『はじまりのうた』のジョン・カーニー監督は毎回秀逸な音楽映画を作っていて。

『はじまりのうた』はミュージシャンが売れるまでの話で。まず、A&Rが超ミュージックラバーというのが信用できるじゃないですか。音楽を好きすぎるがゆえに仕事ができない男(笑)。その人が、バーで女の子が1人で歌っているのを見て、ピアノはこうでベースはこうで…ってバックでミュージシャンの演奏している姿が見えていくんですよね。あの演出が最高。YUIとかあいみょんを見つけた人もきっとこうだったんじゃないかな、みたいな(笑)。

映画のなかで奏でられる音楽の好みは問わず、内容次第という感じですか?

もちろん。僕はあまりジャズに詳しくないですけど、『ジャズ大名』ってすごく面白いじゃないですか。日本の音楽映画でもずば抜けて好きです。架空のジャズの興りみたいなものが描かれていて。ええじゃないかのリズムとジャズのセッションのトリップ感が合体して、ものすごい音楽的カタルシスが得られる。演奏を知らない人もとりあえず参加して、それがグルーヴになっていくのもセッションの醍醐味だし、最終形が決まっていなくて、ただ拡大していくだけのものを映画にしているのがすごい。曲の終わりがないっていうのも画期的におかしい(笑)。江戸時代が間もなく終わるというのに、それも関係なしにセッションに狂うという設定も最高にSFですよね。

この曲みたいな感じの曲を何回も書こうとしました

今回、フェイバリットの映画をいくつかあげてもらっているんですが、『パーフェクトブルー』を音楽映画としてとらえているのも興味深いです。

アイドル音楽映画の先駆けじゃないですか! アイドルが実際に遭うかもしれないトラブルと頭のなかで繰り広げられてる世界と映画内ドラマがないまぜになってくる構成がヤバすぎですよね。サントラがめちゃくちゃ好きで。未麻が家に帰るときにかかるCHAMの「想い出に抱かれて今は」という曲があるんですけど、人生の50曲に選びたいくらい好きです。

Base Ball Bearには「PERFECT BLUE」という曲がありますよね。

「PERFECT BLUE」って言葉自体がすごいと思って。曲の内容自体は関係ないんですけどね。でも、この曲みたいな感じの曲を何回も書こうとしました(笑)。アイドルネッサンスに書いた「前髪」なんかはこのテイストかもしれない。同じアイドルを取り扱っている映画といえば、『邪願霊』ですよ。新人アイドルのシングルのキャンペーンにまつわる流れに密着していくホラー。フェイクドキュメンタリーのはしりなんですけど、話はA&Rが中心だし、最後はPV撮影で終わるので、れっきとした音楽映画ですよ!

やや難点なのが、今回あげてもらったものはレアなものが多いんですよね。

『卒業旅行 ニホンから来ました』の話をしますか(笑)。主人公が大学の卒業旅行である国に行ったら、現地のブローカーにそそのかされてスター歌手になってしまうという話で。最終的に引退興行を打つことになるんだけど、そこでの顛末を見た主人公が、自分はこの人たちに元気を与えてたんだって気づくんです。そこから歌う「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」の歌詞の響き方といったら。すごくいいんですよ。

歌詞やファンとの関係性を見出すあたりにミュージシャンならではの視点を感じます。

ほとんどの音楽には起承転結があるし、作っている人も聴いている人も何かしらの気持ち良さを求めている。その気持ち良さを提供するのがポップソングだと思うんですけど、映画もそうじゃないですか。極端な言い方ですけど、音楽の起承転結を拡大していくと映画になっていくというか。起承転結を裏切る『ジャズ大名』みたいな見せ方もありますけど、終わらないセッションを映画で表現するなんて最高。でも、基本的には終盤に感動のピークがくる。最後に「YOUNG MAN」を歌うと、ストーリーとともにメッセージがグッとくる。『ボヘミアン・ラプソディ』も「We Are The Champions」で、俺たちは勝者だって歌いますけど、何に対しての勝者かというと、人生ですよね。こんなにいい曲なんだって説得力を与えるための2時間だと思う。

シンプルに曲の魅力に気づかせてくれるというのは音楽映画の醍醐味ですよね。『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』で笠置シヅ子を知るとか。

僕もあの映画で笠置シヅ子さんを知りました。それが一番の発見で。画もサイケでトリップ感があって、あのシーンだけ繰り返し観ました。ラストもちゃんと泣けるんですよね。あとは何をあげましたっけ?

ドの音が3回。それだけで音楽なんですよね

『舞妓はレディ』『ウォーターボーイズ』『くちびるに歌を』。

『舞妓はレディ』は舞妓とミュージカルの組み合わせってピザラーメンみたいな感じじゃない?って思ったんですけど(笑)、見てみたら歌うことに必然性があるんですよね。和性ミュージカルとして面白いです。単純に歌がすごくいいし。『ウォーターボーイズ』は、矢口史靖監督なんですけど…。

普通だったら『スウィングガールズ』をあげそうですよね。

そうなんですけど、競技で音楽が使われるのがDJ的で面白いと思っていて。採用される音楽が「Wake Me Up!」とか「愛のしるし」とか「伊勢佐木町ブルース」なんですけど、だいたいリズムのある曲じゃないですか。そこもなるほどと思いました。シンクロナイズドスイミングで使われる曲はこうじゃなきゃいけないんだという。シンクロは音楽がないと成立しないし、映画も音楽がないと成立しないという、実は二重の構造になっているのも面白いですよね。あとは、なんといっても『くちびるに歌を』ですよ。

五島列島の中学の合唱部の話。

『くちびるに歌を』で感動するポイントは、世界で一番簡単な音楽で物語のピークを作っているところ。臨時で合唱部の顧問に就いた先生が、とある事情でピアノが弾けなくなったピアニストで。そもそも彼女がピアニストになろうと思ったきっかけが、子供の頃、お母さんが教会のオルガンでドを3回鳴らしたことなんですよね。これは船の汽笛の音で、この音が聴こえたらがんばりなさいってことだからねと教わる。そこに合唱部の部長の女の子の複雑な家庭事情がからんでいくんですけど、あるとき先生の鳴らすドが3回聴こえる。ここ、号泣です(笑)。それだけで音楽なんですよね。

2人は3回のドに背中を押してもらえるという。

世界一簡単な音楽が心を揺さぶる…! めっちゃいい話! 考えていて気づいたのは、名曲が名曲としてある状態も感動するけれど、音楽が生まれる過程に気づいていくことにも感動があるんだなと。『ジャズ大名』のジャズもそうだし、『はじまりのうた』のバーでの弾き語りからバンドのアレンジが見えるというのもそうだし。『くちびるに歌を』の3回のドもまさにそれですよね。そういう音楽映画をもっと観てみたいなと思います。

小出祐介さんのオススメ「音楽映画」はコレ!

『ジャズ大名』
(1986年/日本)
DVD:2,800円(税別)発売中
発売元・販売元 KADOKAWA

『くちびるに歌を』
(2015年/日本)
DVD:3,800円(税別)/Blu-ray:4,700円(税別)ともに発売中
発売元:アスミック・エース/小学館
販売元:ポニーキャニオン
(c)2015『くちびるに歌を』製作委員会
(c)2011 中田永一/小学館

『卒業旅行 ニホンから来ました』
(1993年/日本)

『ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌』
(1992年/日本)

『パーフェクトブルー』
(1997年/日本)

『舞妓はレディ スタンダード・エディション』
(2014年/日本)
発売中
発売元:フジテレビジョン
販売元:東宝

『ウォーターボーイズ スタンダード・エディション』
(2001年/日本)
発売中
発売元:フジテレビジョン/アルタミラピクチャーズ/電通
販売元:東宝

PROFILE

2001年に結成されたBase Ball Bearのボーカル&ギター。現在は全国ツアー“Guitar! Drum! Bass! Tour”の真っ最中で、ファイナルは12月22日(日)広島CAVE-BE。秋をテーマにした最新作EP「Grape」が配信中。

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