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特集

2019年10月04日 (金) 特集

interview 2

映画と音楽の関係性

サッシャさん

ラジオDJ/ナレーター/声優/タレント/スポーツ実況/MC

ドイツで生まれ、10歳のときに日本にやってきたサッシャさん。MTVのVJでキャリアをスタートさせ、現在は映画番組でナビゲーターも務めるなどマルチな活躍をしている彼に、音楽と映画の関係性について聞いた。

別々の産業だったのが、お互い交わると
win-winになることに気づいたのが音楽映画。

フランクフルト空港で『スター・ウォーズ』を

サッシャさんは小学4年生までドイツで過ごされていたそうですが、一番最初に出会った映画や音楽は何でしょうか?

『スター・ウォーズ』ですね。当時うちの両親が航空会社で働いていて、フランクフルト空港の近くに住んでいたんです。だから空港でよく遊んでいたんですけど、そこに映画館があって、初めて観た映画が『スター・ウォーズ』の『帝国の逆襲』だったんです。あと、家にジョン・ウィリアムズの『スター・ウォーズ』のサントラのレコードが置いてあって聴いていましたね。

1999年からはMTVでVJを、その後J-WAVEのDJにもなりましたが、音楽を紹介するときに心掛けていることはあるでしょうか?

たとえば洋楽といっても、どこの国のどこの出身なのかとか、ゴシップも含めてどういう人なのかとか、人となりを紹介することは意識してるかな。「この曲ってこうですよね」と言っても、音楽の感じ方は人それぞれだから、人によって受け取り方が違いますからね。

映像なくして音楽が成り立たなくなってきている

そんなサッシャさんに、今回音楽映画を5本あげていただきました。『アニー』『THIS IS IT』『サタデー・ナイト・フィーバー』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』『天気の子』です。共通する傾向はあるでしょうか?

1組のアーティストが深く関わっている映画かな。

たとえば『アニー』だとウィル・スミスとジェイ・Zが製作していますね。

それだけだとすごくブラックミュージックになっちゃうんだけど、そこにシーアの色がもろに出ている。現代的なR&Bやヒップホップのビートと、今のポップスの最前線のシーアが組んでいて、すごい映画だと思うんです。シーアは今いろんな映画に関わっていて、サントラの女王みたいになっていますよね。ミュージカル映画ではあるんだけど、うまくポップスにアレンジしているんですよ。

『THIS IS IT』は、マイケルが亡くなる直前までのドキュメンタリーですね。

彼が亡くなってしまったので、予定されていたライブを間接的に見せようとした。これは映画の力ですよね。しかも、全部リハーサル映像なのに、映画として成り立って、ヒットして、DVDもめちゃくちゃ売れた。やっぱりマイケル・ジャクソンってとんでもない人なんですよね。リハーサル映像にお金を出して観てもらえるアーティストって、どのぐらいいるのかなって話じゃないですか。これが映画になっていることがすごい、という意味での音楽映画ですよね。あとにも先にもこんな映画は二度と出てこない。

『サタデー・ナイト・フィーバー』はビージーズの音楽が有名です。

うちにレコードがありました。たぶん世界初のビッグヒットサントラですよね。今は『サタデー・ナイト・フィーバー』の曲は知ってるけど映画を知らないって人もいるわけです。映画が音楽を題材にして、そのために1組のアーティストがレコードを作ってサウンドトラックにするという、今ではすごく当たり前のことを、ほぼ初めてやった、もしくは初めて大々的にヒットさせた。そういう意味で、歴史的にすごく重要な音楽映画だと思います。そのあと何が出てきたかというと、サントラに参加させることによって、デビュー前のアーティストの名前を知らしめることなんです。メインの主題歌は有名な人がやっているんだけど、劇中歌は新人がやっていて、“誰これ?”みたいな人がその後デビューして有名になることが増えましたね。

音楽産業から映画産業へのアプローチが大きくなっていきましたね。

別々の産業だったのが、お互い交わると“win-winになる”ということに気づいた映画だと思うんです。今やもうチャートを映画音楽が席巻してますよね。特に近年そう。ただ、今のインターネットのYouTubeは、MTVとは違うミュージックビデオ文化なんです。MTVは、特集を構成して、何時から何時までと決めてミュージックビデオを流してたけど、今は自分で観るものを選べる。だからフローが全然違う。今、世界的に音楽が一番聴かれているのはYouTubeなんです。アクティブユーザーは20億人ぐらいいるらしいんですけど、そのうち音楽をメインに観てる人が13億人いるらしいんです。つまり、YouTubeは音楽メディアなんですよ。

そういう視点から見ても、音楽映画はツールとしていまだに大きいものなのでしょうか?

むしろ、映像なくして音楽が成り立たなくなってきている今だからこそ大きいんじゃないんですか。MVも映画もスマホで観られるんですよね。Netflixで映画を観られるし、アプリを切り替えればYouTubeで音楽も観られる。スマホのプラットフォームのなかで全部できてしまうから、ある意味時間の取り合いなんです。そこが『サタデー・ナイト・フィーバー』の時代とは大きな違いなんですけど、でも、そうした礎を築いたのはあのへんの時代なんですよ。

その時代に築かれた映像と音楽の関係性が今に至っているということですね。次にあがっている『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は、方向性がかなり違いますよね。出てくるのはキューバの音楽家です。

映画の良さのひとつに、知らないことを教えてくれることがあると思うんです。世界中に名もなきミュージシャンがいて、僕らが思うミュージシャンとはまったく違う生活をしていて、でも愛にあふれているところをライ・クーダーが発掘してくれて、我々はあんな魅力的な人たちが歌う、魅力的な音楽を知ることができた。人生の酸いも甘いも味わってきたミュージシャンたちがカーネギーホールに立ったときのあの表情に、こちらは涙するわけですよ。これはミュージックビデオだったら成立しなかったし、ドキュメンタリーでも成立しなかったと思うんです。映画だったから成り立ったし、音楽だったから2時間観られた。

新作旧作に区別がなく、コンテンツがいいかどうかだけになる

天気の子』は、RADWIMPSの野田洋次郎さんが、製作の初期の段階から新海誠監督と打ち合わせをしていたそうですね。

『君の名は。』も『天気の子』も、“RADWIMPSのミュージックビデオ”っていうくらいきれいじゃないですか。『君の名は。』のときは、もうちょっと音楽をミュージックビデオ的に使っていたと思うんです。でも、『天気の子』ではさらにそれが昇華されて、ストーリーテリングを全部野田洋次郎さんにさせている。話す台詞は全部声優さんたちがキャラクターに言わせているんだけど、ストーリーの思いとか伝えたいメッセージとか、今どういう状況なのかというナレーションの部分は、全部曲に託しているんですよ。今回はRADWIMPSの曲がもっと映画音楽に徹しているんですよね。映画音楽に徹していて、ストーリーテリングをさせているから音楽映画なんです。主人公たちが歌わないミュージカルみたいなもので、それを全部野田洋次郎さんにやらせている。新海誠さんの映画は、キャラクターが歌うんじゃなくて、ストーリーテラーたるミュージシャンが歌うっていうところが決定的に違うんです。

サッシャさんは映画と音楽を愛していますが、これから先は映画と音楽はどんなものになっていくと思いますか?

たぶん全部図書館化するんですよ。サブスクって、図書館まるごと自分が持ってることになるわけじゃないですか。映画も、おそらくどんどん各映画会社が自分たちでサブスクを始める。そこで何が起きるかというと、全部のコンテンツを共有できる時代になる。そうなると、うちの子供を見ていてもそうなんですけど、たとえばYouTuberの映像を観ているときも、新作旧作に区別がないんですよ。音楽も映画も一緒で、コンテンツがいいかどうかだけになると思うんです。だからすごくミュージシャンにとって難しい時代だと思うんですね。自分が新作を出そうとしたら、ビートルズやエルトン・ジョンと戦わなきゃいけない。僕がやってるテレビやラジオもそれは同じだけど、良いものを作れば永遠に聴かれるわけでもあるから、すごく面白いと思いますね。

サッシャさんのオススメ「音楽映画」はコレ!

※2019年9月20日現在の情報です

『ANNIE/アニー』
(2014年/アメリカ)
Blu-ray:1,800円(税別)発売中
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』
(2009年/アメリカ)
Blu-ray:2,381円(税別)発売中
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

『天気の子』
(2019年/日本)
全国東宝系公開中
(c)2019「天気の子」製作委員会

『サタデー・ナイト・フィーバー』
(1977年/アメリカ)
Blu-ray:1,886円(税別)/DVD:1,429円(税別)ともに発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

ちなみに…
サッシャさんのオススメ「映画音楽」はコレ!

『スター・ウォーズ』(ジョン・ウィリアムズのスコア)
『グレイテスト・ショーマン』(パセク&ポールの音楽)
『風立ちぬ』(久石譲のスコア)
『ANNIE/アニー』(シーアの曲)
『レヴェナント:蘇えりし者』(坂本龍一のスコア)

PROFILE

1999年にMTV(当時はVIBE)のVJとしてデビュー。2001年よりJ-WAVE、FM FUJIでラジオDJとしてのキャリアをスタート。日本テレビ『金曜ロードSHOW!』の「映画マイスター」のナビゲーターも務めている。そのほか日本テレビ『ズームイン!!サタデー』レギュラーとしてもおなじみ。

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