お腹から声を出す癖が自然とついているので、
喉がつぶれないんですよ。
中村 中さんの歌い方を真似して学んだりしてました
加藤選手のグローブの内側に「花になれ」と書いてありますが。
これは指田郁也さんの曲のタイトルです。私はフィギュアスケートの羽生結弦選手の大ファンなんですけど、エキシビションで実際に指田さんが弾き語りをして羽生選手が演技をしたことがあって。私はこの曲の歌詞がすごく好きなんですよ。
加藤選手は小さい頃から野球一筋でいながら、2015年に歌手としてデビューもしているという。
歌は昔から好きで、小学6年生ぐらいから人前で歌ってました。学校の全校集会で親友がピアノを弾いて私が歌ったり。
音楽に熱中するきっかけは何だったんですか?
中村 中さんのCDを父が買ってきてくれて、中村さんの歌い方を真似して自然と裏声の出し方を学んだりしてました。
歌手と野球の両立は大変そうですね。
プロになる前の1年間だけだったんですけど、一度きりの人生ですし、「チャンスがあるならお願いします」と以前所属していた事務所の社長さんにお願いしたら快くOKしてくださって。野球選手という肩書きがあったからこそできたことなので、そこは野球に感謝してます。
野球のトレーニング中に、音楽は聴きますか?
聴くことのほうが多いですね。最近はなるべく洋楽を聴くようにしてます。
なぜ洋楽なんでしょうか?
洋楽の曲を歌えるようになりたくて(笑)。カラオケだと私はパワフルな曲を歌うことが多くて、洋楽にはそういう曲が多いので練習を兼ねています。あと、英語の発音が苦手なので、聴いてたらうまくなるかなって。
野球とはまったく関係ない理由ですね(笑)。音楽がないと、トレーニングはきついですか?
私はきついです。周りも音楽を聴きながらやってる人がほとんどですね。「試合前はこの曲」って決めてる選手もいるし。私は試合前はほかの選手と話すようにして、あまり1人の世界に入りすぎないようにしています。
打席に入るときに登場曲が流れますが、あれは力になりますか?
なります! 私はしっかり曲を聴いて打席に入るタイプだし、気分でよく曲を変えていて、半年で変えたこともあります。今年は『SLAM DUNK』にハマってたので、アニメ版の主題歌を登場曲にしてました。
野球なのに(笑)。
球技違いですよね(笑)。でも、めちゃめちゃテンションが上がります。
野球で鍛えていたおかげで声が楽に出せるようになったり
野球のトレーニングや経験が歌を歌うときに活きていることはありますか。
トレーニングかどうかはわからないんですけど、中学生の頃からライブハウスを借りてライブをやっていたときに感じたのは、野球で鍛えていたおかげでそれまで出なかった音域とか、ロングトーンが楽に出せるようになったりしました。
肺活量のせいでしょうか。
練習中によく声を出すので、それもあるかもしれません。お腹から声を出す癖が自然とついているので、喉がつぶれないんですよ。休憩なしで4時間カラオケで歌っても楽勝です。
よく監督が「腹から声出せ!」って怒鳴りますけど、あれはあながち間違えてないんですね。では最後に、女子野球観戦の楽しみ方を教えてください。
ひいきの選手を見つけると面白いと思います。みんな泥臭さがあって、見ていると自分もがんばろうと思えるし、勇気がもらえます。感覚としては高校野球に似ているかもしれませんね。男子のプロとはくらべものにならないかもしれないですけど、それでも目を引くところはあると思うんです。今は球も速くなってるし、柵越えを打つ選手もいます。「女子でもこれだけできるんだ!」という目線で見てもらえると純粋に楽しめると思います。
PROFILE
女子野球選手。外野手。少年野球チームの監督だった父親のすすめで5歳で野球を始め、少年野球チーム、リトルリーグ、ボーイズリーグを経て、高校時代に企業チーム、女子野球日本代表候補選手になり、2015年に女子プロ野球選手に。2019年11月、女子プロ野球リーグからの退団が発表されるも、現役続行を表明。2015年にはCDデビューもしている。