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2018.10.19

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新宿LOFT

interview #1

新宿LOFT
柳沢英則 店長

日本を代表するライブハウスと言っていいだろう新宿ロフト。 10年以上店長を務めてきた大塚さんが事業部長になり、この夏、新店長になったのが、 現役バンドマンでもある柳沢さんだ。新体制になったロフトの“今”を聞いた。

text:野中ミサキ(Nano.Works) photo:青木早霞(PROGRESS-M)

音楽不況とかって言われていますけど、
ライブハウスは元気がある感じはしますね。

新宿ロフトの名前をさらに 広げるのが僕のやりたいこと

渋谷屋根裏、下北沢ガーデンを経て、新宿ロフトで働き出したのが4年前。そしてこの8月に副店長から店長に就任されたそうですね。

新宿ロフトと下北沢シェルターでブッキングをやるようになって、副店長になって1年経たないくらいで前店長の大塚がライブハウス事業部の部長になるということで、自分が店長になりました。といっても何か変わったことは特にまだないかな。プレッシャーとかも多少はあるけど、そこで折れていたらつまらないし、前向きに楽しくやっていきたいです。

2016年、ロフト 40周年のタイミングで本誌(80号)で大塚さんにお話をうかがったとき「歌舞伎町=怖いっていうイメージを変えていきたい」とおっしゃっていましたが、そのあたりの意志も引き継いでいらっしゃいますか?

4年間大塚さんと一緒に“CONNECT 歌舞伎町 MUSIC FESTIVAL”の実行委員をやってきたんで、街を良くしていきたいなっていう気持ちはありますよ。ただ、歌舞伎町っていうより新宿ロフトの名前をさらに広げるっていうのが僕のやりたいことです。歌舞伎町より、下北沢のほうが好きです、北沢生まれなんで。

(笑)。ここ数年、老舗の閉店や新店の登場と、ある意味で新陳代謝がいい東京のライブハウスシーンですが、それこそ新宿、下北沢を長年見ている柳沢さんは最近の動きをどう感じていらっしゃいますか?

ライブハウスはそれぞれカラーが違うと思うんで、一概に“シーン”っていうのはなかなか難しいけど、盛り上がっているかいないかっていうと、盛り上がっていると思います。ロフトでもパンクのイベンターが見つけてきた若手バンドを見ると“面白いな、元気いいな”なんて思うし、音楽不況とかって言われていますけど、やっぱライブハウスは元気がある感じはしますけどね。アーティストのモチベーションもお客さんのエネルギーも高い感じがしますしね。

お金だけ払って「お疲れさま」って 言われても二度と出たくないし

俯瞰で見ると、出演者もお客さんも、ここ数年でずいぶん多様化しましたよね。

ただ、ライブハウスの文化全体を通して見ると、もっと底上げをしていきたいなとは思いますね。それはそれぞれのライブハウスでも必要なことだし、大きなイベントを作ろうとか、意識的に自分たちで行動できることがあるなら率先してやっていきたいし。“CONNECT歌舞伎町”とかサーキットイベントをブッキングするときも、そういう思いはあります。

店単体の底上げとして試行錯誤しているところも多いなか、ロフトはいい意味でフラットな印象があります。やっぱり独自の営業方法があったりするんですか?

あります、もちろん。ブッカーごとにそれぞれのコネクションもあるし、自分たちでカッコいいものにしていきたいですね。うちも平日でお客さんが少ないときもたまにありますけど、それをどうこう言っても仕方ないし、こっちから変えていかないと。とにかくライブハウスでバンドと一緒にいる空間を長く作りたいです。じゃないと、そのバンドが何をやりたいのかわからないじゃないですか。ただ音を聴いて“曲すごいな”とか“集客あるな”とかでもいいんですけど、音が面白いなって思ったらライブを観て、野心があれば“次はこうしてみようよ”とか。せっかくここにいるなら、それだけじゃないものをやりたいです。

そこは、ご自身がバンドマンっていうところも強いのでは?

そうですね。それで自分も育っているからスタイルができあがっている感じはしますけどね。昔、自分がバンドでロフトに出たとき、集客があり得ないくらい少なかったことがあって。こりゃ死刑かなって思うじゃないですか。でも終わったあとに大塚さんが「いいバンドだからがんばれよ」って言ってくれて。そこで、やっぱロフトってすげぇ懐が深いと思ったんですよね。ライブハウスは、もっと人間関係の基準値を上げていかないと。

人間関係の基準値。

つまらないですよね、顔も知らない人に呼ばれてお金だけ払って「お疲れさま」って言われても二度と出たくないって思っちゃうし。そこはライブハウス側が意識を高く持っていないと。もっと面白いことやろうとか、バンドマンもヴァイブスやべーなっていう人とか、いっぱいいるんですよ。売れるかどうかはわからないけど(笑)、ロフトとしても自分としても力になってあげたいし、いろんな人に観てもらいたいなって思いますね。やっぱり話してみないとわからない良さってあるし、話すとすごいその人たちのこと好きになりますから。仲良くなって仕事が終わっても飲みに行ったりレコーディングを見に行ったり、そういうのがすごい好きです。

柳沢さん、すごく人間くさい方ですね。もちろんいい意味で、です。

何でもそうだと思いますけどね、バンドもそうだし、せっかくやるなら楽しく。楽しいって笑顔だけじゃないから。やっぱ根っこの部分では、一緒に飲んでいろんな話をして底上げしていきたいですね。

新宿LOFT

ライブハウスは、 もっと人間関係の基準値を 上げていかないと、 つまらないですよね。

世に浸透するバンドが出てくる。 ロマンがある仕事だと思いますよ

そのなかからビッグアーティストが出てくる可能性もありますもんね。ただ、見方によってはライブハウスって、もっと大きなホールなどへの橋渡し的な場所だったりするわけで。

そこまでそう思わないですけどね、僕は。世の中に浸透するバンドが出てくるっていうのは、ライブハウスの醍醐味でもありますから。すごいロマンがある仕事だと思いますよ。ロフトに出てもらえなくても、ずっとつながっていられたら最高ですよね。

そうですね。では、柳沢さんが思うライブハウスの役割とはなんでしょう?

ライブハウス自体はそれぞれにカラーがあって、そのライブハウスが好きなバンドがいて…って、もう何年も変わっていないライブハウス像があると思うんですけど、いろんな人が来る場所だと思うし、その人たちが自然につながってやっていけるのもライブハウスだと思うんです。

柳沢さんが長年続けていらっしゃるイベント“爆音祭”にもそういったクロスオーバーの精神が反映されているように思います。ブッキングするうえでのこだわりなどはありますか?

何でもあり…ではないかな。20年くらいやっている自分のフィルターを通して、それぞれにカッコいい要素のあるバンドを呼んでいます。多いときで16バンドくらい呼ぶんですけど、若手もベテランも一緒になって、そこからもっとグルーヴが生まれて。ヒップホップとかハードコアとか少し静かめのバンドとか、ジャンルレスにやっていくのは面白いなと思っているので、どんどん続けていきたいかな。それと毎年やっている“LOFT FES”とかもどんどん面白くしていって、いろんな人に新宿ロフトを伝えていきたいなって思います。

あくまで、ロフト第一主義なんですね。

新宿ロフトって、すごいライブハウスだと思いますよ。自分にとっても憧れだったし、今もそういうハコを目指していますけどね。暑苦しい話ばっかりして申し訳ないですけど。もっとも、いろんな人が新宿ロフトを作っているわけだから、店長だからって何でもやっていいわけじゃないし、自分のカラーもイベントでどんどん出していって、ロフトって面白いことやってるなって伝えていきたいです。毎日の営業も大事だけど、それ以上にもっとデカいところでイベントとかやるのが面白いし、いろいろやって、もっといろんなバンドと知り合えればいいなって思ってます。ジャンルなんかに縛られない懐の深さは持っていたいですね。自信を持って「ロフトが一番すごい!」と言いたいんです。

新宿LOFT

新宿LOFT

東京都新宿区歌舞伎町1-12-9 タテハナビルB2(最寄り駅:新宿駅、西武新宿駅)
03(5272)0382

日本を代表する繁華街「歌舞伎町」にある、1976年オープンの老舗ライブハウス。“ロッキンコミュニケーション”をスローガンに、バーステージやバーラウンジも併設し、ライブ終了後は出演者とお客さんが交流できるようにもなっている。キャパは550人。

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