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音楽利用トラブル回避ガイド

2017年07月14日 (金) 音楽利用トラブル回避ガイド

「動画サイト『歌ってみた』投稿の注意点」の巻

人気の高い「歌ってみた」。ご存知の通り、好きなアーティストの曲をカバーして歌った動画を、動画共有サイトに投稿するものだ。今回はこれを利用する際の注意点をレクチャーします!

解説

 Aくんが行った替え歌の制作には、著作者人格権という権利がかかわってきます。この権利について、詳しく見ていきましょう。
 著作権法では、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定められています。
 著作者は、経済的な利益を保護する著作権のほかに、著作者個人の「思想や感情」などの人格的な利益を保護する権利を持っていて、これが著作者人格権と呼ばれる権利です。
 著作権は、第三者への譲渡が可能な財産権であるのに対して、著作者人格権は、著作者の人格的な利益の保護を目的としていますので、著作者に固有の一身専属の権利とされていて譲渡や相続はできません。
 したがって、著作者が亡くなった場合には、この権利は消滅することになりますが、たとえ著作者の死後であっても、著作者が生存していると仮定した場合に権利侵害となるような行為をしてはならないとされています。
 著作者人格権には、具体的に以下の権利が含まれています。

1. 公表権
 まだ公表されていない著作物を公表するかどうか、公表する場合には、公表の時期や方法を決めることができる権利。著作者の同意により公表が行われれば、その公表権は消滅します。また、公表前に著作権が第三者に譲渡された場合には、第三者がその著作権を行使して著作物を公表することについて、著作者が同意したと推定されます。
2. 氏名表示権
 著作物の原作品に、またはそれが利用される際に、著作者の氏名を表示するかどうか、表示する場合には、どういう名称を使用するか(実名またはペンネーム等の変名)を決めることができる権利。著作物の利用者は、その著作者の別段の意思表示がないかぎり、その著作物につき、すでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示することができます。
3. 同一性保持権
 著作物の内容やタイトルについて、著作者の意に反した変更、切除その他の改変を受けない権利。著作者の許諾を得ずに、歌詞を変更して替え歌を作ることや、楽曲のメロディを変更する行為は、この権利を侵害する恐れがあります。

 また、著作者の名誉または声望を害する方法によりその著作物を利用することは、著作者人格権を侵害する行為とみなされています。
 なお、カラオケ伴奏に合わせて歌う動画を、動画投稿サイトに無許諾でアップロードする行為は、カラオケ音源の権利者が持つ送信可能化権を侵害することになります。

 Aくんは、多くの人を楽しませる目的で替え歌を作りましたが、ファンのとらえ方は違っていたようです。もし自分がアーティストだったら、ファンだったらと想像すると、この問題はわかりやすいかもしれません。楽曲やアーティストのイメージ、想いを大切にしながら、音楽を楽しんでいきたいですね。

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