特集記事

2016.11.15

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対談!徹底追求第3弾!!

「チケット転売問題」について考える-電子チケットによる不正転売対策-
鶴田武志さん(株式会社パワープレイミュージック代表取締役、日本音楽制作者連盟理事)× 佐藤 元さん(EMTG株式会社取締役副社長)

本誌75号、78号に続く、第3弾。これまでは不正転売が引き起こす問題点を取り上げてきたが、今回はその対策についての具体例を紹介する。スマートフォンを使った電子チケットを導入することで、不正転売の防止につながると同時に、「チケットを購入したが仕方なく行けなくなってしまった」方のための公式トレード、さらには来場者へのファンサービスも実現可能になった。電子チケットを積極的に取り入れているUVERworldの鶴田プロデューサーと、電子チケットのシステムを開発したEMTGの佐藤副社長に話を聞いた。

text:柴 那典 photo:内海裕之

鶴田武志さん、佐藤 元さん

電子チケットのアプリはどんどん情報を更新できる。チケットがメディアになったと言えると思います。

NHK『クローズアップ現代+』でも報じられるなど、社会的な注目を集めつつあるチケット高額転売問題。「転売ヤー」と呼ばれる一部の個人や団体が不正な手段で入手したチケットをチケットキャンプなどの転売サイトで高値で売り出す手口も知られつつある。では、実際に高額転売を防止するために、どんな取り組みがなされているのだろうか? UVERworldは2016年に行った全国ツアーからEMTG社の運営するスマートフォン電子チケットと公式トレードサービスを導入。「本当にそのアーティストが好きなファン」にチケットを届ける仕組みを取り入れている。その成果について、彼らの所属プロダクションである株式会社パワープレイミュージックの鶴田武志社長、EMTG株式会社の佐藤元氏に聞いた。

不正転売対策としての電子チケットの役割について

チケットの高額転売については、どのようにして問題意識を持ち始めましたか?

鶴田うちの場合は実際にアーティストがそれを気にして行動を起こしたというところから始まっているんですが、それ以前も、チケットキャンプがスポットCMを打ち始めたあたりから疑問には思っていました。実際、リサーチすると非常に高額で転売されている。あとはやはり、ファンのみなさんの声でようやく気づき始めたというのが大きいですね。「転売NO」の声明を出してからも、みなさまから「対応が遅いのでは?」という声があったのは事実です。

「もっと早く対処してほしかった」というファンの声があった。

鶴田そうですね。さかのぼるとヤフーオークションが普及したあたりから高額転売は始まっていて、法的な問題を含めて手を打てなかった。我々が問題意識を持つことが遅かったのは反省につきる点ですが、遅ればせながら対応しているという現状です。

チケット高額転売について、新たなテクノロジーを導入することで対策できるという意見もあります。UVERworldではどういうシステムを導入したんでしょうか?

鶴田そこでEMTGさんに協力をいただきました。ファンクラブの運営を一緒にやらせていただいているなかで、電子チケットと公式トレードセンターのご提案をいただいたんですね。

EMTGさんが電子チケットを導入したのはいつ頃のことなんでしょうか?

佐藤サービスをスタートしたのは2014年6月からですね。コブクロの大阪城ホールの公演から導入しました。

どういうきっかけで開発に至ったんでしょうか?

佐藤もともと僕らはチケット事業というよりはファンクラブ運営をやっている会社なんですね。で、2010年頃からファンクラブのシステムもPCやガラケーからスマホ主体に変わっていった。だったら、スマホでチケットに応募できて、そのまま会場に入れるというのは便利なのではないか、と。転売対策というよりは、ファンクラブのユーザーに対してのサービスとしてアプリによる電子チケットを始めました。

電子チケット化による様々なメリットについて

鶴田武志さん

今までになかったファンサービスに紐付けたりもできる。そういう意味での使いやすさもありますね。-鶴田-

EMTGさんが転売対策に取り組んだのはそれ以前からですよね。

佐藤そうですね。EMTGは「エンタテインメント・ミュージック・チケット・ガード」の略称で、2008年のサービス開始から一貫してチケットの不正転売対策に取り組んできました。以前は現場で写真付きの身分証明書のチェックをして個人を認証していたんです。でも、それはチェックする側も大変だし、入場にも時間がかかる。なので、最初は写真付きのライブ会員カードを作っていただき、チケットに名前を印字し、それと照合するサービスをやっていたんですね。その後もQRコードを使った電子チケットを一部導入していたんですが、QRコードは会場に読み込みのための機材が必要になりますし、ユーザー同士での受け渡しや偽造も可能。そこで、スマホのアプリだけで動作して、スマホの画面にスタンプを押すと入場できるようなシステムを開発しました。基本的に携帯電話の端末は他人と貸し借りはしないじゃないですか? 応募時の電話番号を記録するので、たとえほかのスマホのアプリでIDとパスワードが一致しても、チケットは表示されない。これでゆるやかにオークション対策ができるということがわかりました。

スマホにスタンプを押すというのは、どういうことなんでしょうか?

佐藤とてもシンプルな仕組みを使っています。単純に、スマホの画面にこちらで用意したプラスチック製のスタンプを押すんです。それをスマホのアプリが認識する。そうすると「スタンプが押された」という情報がサーバーに伝わる。リアルタイムで会場から入場した人数も把握できます。

実際に使ってみての感触は?

鶴田非常に素晴らしかったです。何のストレスもなく、トラブルもなく、スムーズにお客さんが入場することができた。加えて、来場者のデータを取れるというのはプロダクションにとってはありがたいですし、ユーザーにとっても、電子チケット上でその日のライブの曲順を後日掲載したり、今までになかったファンサービスに紐付けたりもできる。そういう意味での使いやすさもありますね。

佐藤紙チケットにはそこに記載されている以上の情報量はないんですけれど、電子チケットのアプリはどんどん情報を更新できる。プッシュ通知の機能もあるので、グッズの販売時間や終わったあとのメッセージも伝えられる。スマホになってチケットがメディアになったということが言えると思います。

紙チケットをライブの記念に取っておきたいファンもいると思いますが、そのあたりはどうでしょう?

佐藤アーティストさんによっては、ツアー名と会場と日付けを入れたチケット型のカードを配って、それを記念品代わりにしたりもしています。電子チケットのアプリ内でも、チケットに紐付いてライブ履歴がたまっていく形のメモリアルコレクションというサービスを提供するということもやっています。

定価での取り引きによる公式トレードサービスについて

佐藤 元さん

スマホのアプリだけで動作して、スマホの画面にスタンプを押すと入場できるようなシステムを開発しました。-佐藤-

転売については「チケットを買ったけれど行けなくなった」というケースも多いと思います。その対策としてオフィシャルな二次流通の場を整備したということですが、これは?

佐藤入口のセキュリティを高くすればするほど、本人しかライブに入れなくなる。だから当然二次流通の場は必要になります。公式での、定価にかぎった二次流通の場も2008年から用意していました。ただ、紙のチケットでそれをやるのは、チケットを返送するなどユーザーにとっては面倒なことなんですよね。なので、電子チケット化したことで短期間でチケットの受け渡しが容易になったのは大きかったと思います。

実際に導入しての手応えはいかがでしょうか?

鶴田手応えはありました。具体的なデータで言うと、ファンクラブ販売分のうち約1,000枚が公式チケットトレード、約1,100枚がチケットキャンプを利用した。つまりほぼ半分が公式を使うようになりました。そして、チケットキャンプの出品のうち紙チケットが96%、いっぽうで公式チケットトレードの利用は電子チケットがほとんどでした。

今後に向けての課題はありますか?

佐藤スマホを持ってない人への対応をどうするかは課題です。そういう人に対しては紙チケットにせざるを得ない。現状ではUVERworldでも紙と電子が半々です。そうすると、紙のチケットはどうしてもチケットキャンプに出てしまう。電子チケットの割合を上げるプロセスは必要だと思います。

鶴田あえて今回電子チケットと紙チケットを両方使ったのは、やっぱり紙がいいという声も多いんですね。こちらとしてはすべて電子チケットに切り替えたい気持ちもあるんですが、ユーザーの声を無視するわけにもいかない。ただ、電子チケットが浸透してきて、コンサートのチケットがこういう形だという認識が広まると、ユーザーにも納得してもらえる。電子チケットの認知を少しずつ上げていかないといけないと思います。

EMTG 電子チケットの不正転売対策イメージ

編集部より

今回お話をおうかがいしたEMTG以外にもイープラス、コミュニティネットワーク、ぴあ、ローソンHMVエンタテイメント、Live Styles、テイパーズ、ボードウォークといった「チケット高額転売問題キャンペーン(#転売NO)」にご賛同いただいた各社でも取り組みは始まっています。詳しくはhttp://www.tenbai-no.jp にアクセスしてご確認ください。

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