ライブハウス店長インタビュー

vol.38 新宿SAMURAI 大橋隼平さん、浅野俊介さん

vol.38 新宿SAMURAI 大橋隼平さん、浅野俊介さん

店長経験もライブハウス勤務も初だという大橋さんと音楽レーベルclearの代表を務めている浅野さんがタッグを組んで舵を取っている新宿SAMURAI。マネージメント会社が運営主体という強みを活かし、アーティストの夢をサポートしている。

text:野中ミサキ photo:岡本麻衣(ODD JOB LTD.)

店長とはどうあるべきかということより何をしている人なのかということが大事。
今やれることをやって、喜ばれたことを自分の形にしていこうかと思っています。

やると決まってからオープンまで、約半年間でした

今回は、浅野さんと大橋さんのお2人にお話をうかがいたいと思います。まずは、新宿SAMURAIオープンまでの経緯を教えていただけますか?

浅野もともとURGAというライブハウスだった場所を改装したものなんですけど、新しいオーナーが舵を取れる人間を探しているということで、以前から仕事でつきあいのあったライブハウス勤務経験のある僕に話がきたんです。「じゃあ、運営に関するガイドラインを引きますよ」ということで、携わることになりました。その後、オーナーが店長として大橋くんを連れてきて。

大橋僕は、オーナーとはたまたま知り合って一緒に飲みに行く仲だったんです。「店長がまだ決まってないんだよなあ」っていう話をしているなかで僕の名前をあげてくださって。これまでライブハウスで働いた経験はなかったんですけど、チャンスをいただくような形で始めました。

浅野そこからオープンに向けて具体的に店の名前を決めたりブッキングを始めたり。やると決まってからオープンまで、約半年間でした。恐ろしかったのが、5月31日までURGAが営業していて、最後の深夜イベントが終わったあとから6月11日のオープンまでに工事をしなきゃいけなくて…大変でしたね。

日々の運営では、それぞれどういった役割なのでしょう?

浅野フロアやバーカウンター内は大橋主導で、金銭管理や売り上げ目標は僕が管理しています。ブッキングは2人でやっています。

ソフト面については浅野さん、ハード面については大橋さんが主導しているというイメージでしょうか。

浅野そうですね。プラス、広告宣伝だったり目標立てだったりっていうハンドリングを僕がやっています。完全に分業しているわけではないんですけど、ほかのライブハウスとは形態が少し違うかもしれないですね。

マネージメントの切り口で踏み込んでアドバイスできる

新宿SAMURAI最大の特徴は、運営の軸がマネージメントだという点だそうですが、それはどういったところに表れているのでしょう?

浅野一番は、出演者目線に立てるっていうところがありますね。それなりのバンドになれば必ずスタッフがいると思うんですけど、現場ではバンド以上にスタッフがイニシアチブをとっているので、そこに対してのサービスをできるのが強みかなと思っています。

大橋出演者に対しても、今まで近くで見てきたなかで売れたアーティストの法則だったりやり方だったりを、マネージメントの切り口でちょっと踏み込んでアドバイスできるっていうのはありますね。

それは、よく言われる“バンドを育てる”という部分ですね。

浅野それを、よりシステマチックにやっている感じです。店長とか責任者の主観に押しつぶされるバンドが多いので、そこはちゃんと相手を見て進めていきたいなと。ライブの出演者のマネージメントをしている感覚に近いですね。なので、“何でもいいから4、5バンド突っ込んでやっちゃえ”みたいなやり方はしたくなくて。自分がマネージメントしているバンドがそういう目にあったら、そこにはもう出たくないって思うから。あとは、外の人から「いいバンドいない?」と聞かれればアウトプットできるっていうのもマネージメントを軸にしているからこそで、関係者を集めてプレゼンライブ的なものも自前で組めたりするっていう強みもあります。

大橋ただ、露骨にここに行けば関係者とつながれるっていうポジションのハコにしたいわけではなくて。ちゃんとアーティストを応援して、成長していくうえでアウトプットがあればいいかなと。結果的にそうできるところにしていきたいなとは考えています。

新宿SAMURAI 大橋隼平さん、浅野俊介さん

あいさつだったり清掃が当たり前にきちんとできることが一番大事

大橋さん、まったくの未経験で始めた店長職ですが今のところ手応えはどうですか?

大橋気持ち的には、まだ始まっていないというような感覚なんです。自分たちのやりたいことが山積しているのが現状で、正直苦しい。店長とは何だろうって毎日考えてます。わからないから『音楽主義』もずっと読んで勉強していたりしますし…でも、ここに載っている人たちにはなれないと思って(笑)。ただ、店長とはどうあるべきかということより何をしている人なのかということのほうが大事なんじゃないかと気づいて。今やれることをやって、喜ばれたことを自分の形にしていこうかと思っています。

浅野運営的なことで言えば、客観視して今のところうまくいってると思います。僕はライブハウスとはサービス業だと思っていて、あいさつだったり清掃が当たり前にきちんとできることが一番大事だと思うんです。極端な話、音がいいとかそういうことはその次でもいいんじゃないかなって。まずは店をブラッシュアップしてから、中身を詰めていく。っていうのを考えると、すごくうまくいっているなと。それに今、音楽事務所とかスタジオ系列店とかが多いなかで、うちは完全に独立しているので、しがらみもなくマイペースにやれているので。あとは、大橋くん次第かなって(笑)。

大橋それは、ひしひし感じています(笑)。ちゃんと出演してくれたアーティストが見たい景色を見られて、それがビジネスとしても成り立つためにはどうしたらいいのかっていうのを考えていかなくちゃいけないし、もっと言えば、その前段で夢とか希望がない子たちが多すぎる。それって、方法とかそのあとどうなるのかわからないだけなので、そこを伝えていきたいなって。店長の仕事は、夢を語ることだと思うので。

5年後には売れているバンドを輩出できるライブハウスにしていたい

新宿歌舞伎町でライブハウスを運営するうえで感じていることなどはありますか?

大橋立地的にも海外の方がすごく多いエリアですし、そのへんは意識していきたいなと。出演者もこれまでにインドネシアやノルウェーのバンドに出てもらいました。

浅野近くにある大久保公園が今いろんな面白いことやっているんで、うちもそこでイベントをやろうかなと。あとは、来年の6月は別の大きな会場でSAMURAIプレゼンツの1周年イベントをやりたいなと思っています。

大橋ご近所の先輩ライブハウスとは交流もあるし、同業ですが味方だと思っています。向こうはどう思ってるのか気になりますけど(笑)。良い意味で刺激し合える関係になってたらうれしいなと思います。

では最後に、それぞれの近い将来の目標を聞かせてください。

浅野僕は、早く2店舗目が作りたいですね。400くらいのキャパのライブハウスってあんまりないので、そこに参入できるといいなと。

大橋僕は、5年後には売れているバンドを輩出できるハコにしていたいなと思いますね。ライブハウスの店長として、そこに責任感を持ってやっていきたいと思っています。CDを出すだけだったらいつでもできるよっていうのはうちでは大前提なので、そこから先は何をするのかっていう組み立てをしてあげなきゃいけないし、そこを強みにしながら居心地のいい場所にしていきたいなと思います。

新宿SAMURAI

新宿SAMURAI

東京都新宿区歌舞伎町2-42-16 第2大滝ビルB1
03-5287-3390

新宿URGA跡地に2016年6月にオープン。スタンディングでは150名収容可能。紺色の壁や木の素材感を活かしたバーカウンターなどあたたかみのある空間が広がっている。

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